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最高裁判所第二小法廷 昭和35年(ク)174号 決定 1960年7月04日

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

元来、私権に関する裁判を如何なる手続によらしめるかは、事件の種類、性質に応じ、憲法の許す範囲内において、立法により定め得る事項であると解すべきところ、競売法および民訴法によると、不動産の任意競売手続において不動産所有権の得喪に関してなされる競落許可の裁判は裁判所の決定をもつてなすべきものとされ、これに対する不服申立としては抗告および特別抗告の途がひらかれ当事者に主張、弁解の機会が与えられているのであつて、その審判の手続に口頭弁論ないし審尋が要求されているわけではないが、かかる手続に基く裁判も法律の定める適正な裁判というべきであり、これをもつて憲法三二条に違反するものというを得ないことは当裁判所大法延判決の趣旨とするところである(昭和二四年(オ)第一八二号同三三年三月五日判決、民事判例集一二巻三号三八一頁参照)。したがつて、憲法二九条の違反をいう論旨は、結局前提を欠くことに帰する。論旨はすべて採用することができない。

よつて、抗告費用は抗告人の負担とすべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

《当事者》

抗告人 石井干城

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